マツダAZ-1、ホンダ・ビート、スズキ・カプチーノ…日本が誇る本格軽スポーツカー、平成のABCトリオを解説!

2022年2月28日

海外にはない独自の規格として、国内の自動車産業の黎明期から日本人のアシとして支えてきた軽自動車。

経済性を重視したクルマが多くを占める中、平成初期に突如2シータースポーツカーが3社からデビューしました。

それまでスポーツ仕様はあったものの、一からスポーツカーとして専用設計された軽自動車が、しかも同時期に3台も現れたのは前にも後にも例がなく、今でもクルマ好きの間で語り継がれています。

いつしかこの3車種はそれぞれの車名の頭文字をとって平成のABCトリオと呼ばれるようになりました。

今回はそんなABCトリオを1台ずつ解説し、2021年現在の中古市場の状況にも触れてみます。

ABCのA:AZ-1 (マツダ)

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By Taisyo, CC BY-SA 3.0, Link

マツダから登場したのは、見た目のインパクトが強烈なAZ-1です。

まるでイタリアのスポーツカーを軽規格に収めたようなスタイリングには、ドアが上方へ持ち上がる、所謂ガルウィングドアを採用。

とはいえ、見た目は本格的なスポーツカーに見立てた、中身は普通の軽自動車では?と思いきや、全くそんな事は無く、内容もかなり本格的なスポーツカーです。

ボディ外板はFRPによる成形で、この外板は簡単に取り外し出来る様になっています。

外板に被われているのが「スケルトンモノコック」と呼ばれるフレームで、この構造がガルウィングドア&FRPボディの採用とボディ剛性の両立を可能にしています。

エンジンはスズキ製で、アルトワークスや後に紹介するカプチーノに採用されていたF6A型3気筒DOHCターボを搭載。

加えてエンジンレイアウトはドライバー後方のミッドシップとすることで、動力性能を高めています。

トランスミッションはMTのみが用意されました。

軽自動車だから、という妥協の一切ない硬派なスポーツカーに仕上がっていますが、それだけに少々乗り手を選ぶピーキーな挙動にもなっております。

大量生産に向かない構造と乗り手を選ぶ性格、当然日常域での実用性がかなり犠牲になっている事もあり、販売は低迷。販売期間としては3年程度で終えてしまいます。

AZ-1は当時マツダが掲げていた5チャンネル販売戦略に基づき、オートザムディーラーにて販売されました。

バリエーションには、マツダスピード製のエアロパーツを装着したマツダスピードバージョンや、ボンネット先端のフォグランプが印象的な「M2 1015」などがあります。M2とは90年代前半に存在した、マツダ車のコンプリートカーなどを企画していたグループ会社で、1015もそうしたコンプリートカーの1台にあたります。

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By TTTNIS, CC0, Link

またAZ-1はスズキにもOEM供給され、「スズキ・キャラ」として販売されていました。スズキには一時期、カプチーノとキャラの2車種もの軽スポーツカーが同時にラインナップにいたことになります。

現在AZ-1を手に入れるとなると、もともとの生産台数が多くはない点と、マニア人気が絶えず価格が高騰している点が気になります。

価格は200万円台など珍しくなく、安くても150万程度という状況です。

また近年の日本車人気により海外でもAZ-1の存在がマニアの間で知れ渡るようになり、海外流出も増えてきています。

ABCのB:ビート (ホンダ)

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By Rainmaker47, CC BY-SA 3.0, Link

続いてはホンダから送り出されたビートです。

AZ-1と同じくエンジンレイアウトはミッドシップで、ホンダとしてはNSXに続く2シーターミッドシップマシンとなります。

エンジンはABCトリオでは唯一ターボ無しのNA、E07A型3気筒が搭載されます。NAの軽自動車というと非力なイメージがありますが、ビートは自主規制一杯の64馬力を実現。この馬力を繰り出すエンジン回転数は8100rpmと、高回転まで回して楽しめるエンジンになっています。

ドライバーのすぐ後ろでブン回るエンジンを、オープンボディでダイレクトに感じることができるのは、このクルマの大きな魅力です。

タイヤはフロント13インチ、リア14インチという前後異径サイズになっており、さらにトランスミッションはMTのみと、AZ-1にも通じる本格的なスポーツカー志向が見られます。

一方でメーターはバイクのそれを思わせるデザイン、ゼブラ柄シート等、遊び心も随所に見られるクルマに仕上がっています。

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By dave_7Honda Beat, CC BY-SA 2.0, Link

ビートはAZ-1に比べると販売期間が長く、販売台数も多かった事から、現在もそこそこの台数が流通しています。

価格は30万から、高額な物になると300万円台の個体が売りに出されています。

平均的には、大体100万円前後で購入できるものが多いです。

高価格帯を見てみると、極上コンディションの他にも専門店にてオーバーホールされた個体が比較的多く、購入した後に掛かるメンテナンス費用を考慮すると、予算オーバーになっても検討する価値はあります。

維持に対しては専門店が存在する事や、近年ホンダから一部の純正部品の生産が再開されるなど、明るい話題も出てきています。

ABCのC:カプチーノ (スズキ)

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By Alexander Migl, CC BY-SA 4.0, Link

最後に紹介するのは、スズキによるFRスポーツカー、カプチーノです。

AZ-1とビートがミッドシップなのに対し、カプチーノはフロントエンジンのFR駆動方式を採用しています。

エンジンは、前期型がアルトワークス用のF6A型3気筒ターボ(AZ-1と共通)、後期型はオールアルミ製のK6A型ターボを搭載。

軽規格でありながら、このエンジンを縦置きで収めてロングノーズ・ショートデッキによるFRの古典的スタイルを実現しています。

ルーフは4分割構造になっており、フルオープン、タルガトップ、Tバールーフ、クーペと4つのスタイルに変化できます。

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By Rutger van der Maar1994 Suzuki Cappuccino & 1963 MG MGB, CC BY 2.0, Link

トランスミッションは前期モデルこそ5MTのみの設定だったものの、後期型では3ATが追加され、ABCトリオの中で唯一ATモデルが選べたクルマでした。

カプチーノはアルトワークスやジムニー用の部品が流用できる事もあり、チューニングパーツが豊富に揃っています。

一時期イギリスにも輸出された時期があり、オースチンヒーレー・スプライトの再来と評され、カルト的人気を集めました。

中古市場では流通台数はまだ残ってはいますが、前述の通りチューニングパーツが豊富な事もあり、イジり倒された個体も少なくありません。

それ故か、100万以下の値が付けられている個体が結構多く、150万ほどを予算に充てられるのであれば、より程度の良いカプチーノを見つけられるでしょう。

いずれにしろ、何かしら社外パーツが入っていることが多いので、現車確認では改造箇所をしっかりチェックする必要がありそうです。

まとめ

一口に軽2シータースポーツといっても、その特徴は三者三様で、それぞれが強い個性を持っています。

バブル経済の最中に開発されたABCトリオは、現在では販売から30年近く経過しようとしている、既にネオクラシックの域に入るクルマとなっています。

しかしながら今でも他に取って代わるクルマがない!といえる色褪せぬ魅力が詰まっており、ジムカーナやミニサーキットでは今なお活躍する姿を見かけるのも事実です。

そんな休日ドライブのお供としても、モータースポーツでも人気のあるクルマなので、相場は上昇傾向が続いています。

欲しいと思ったら早めに行動に移して、納得のいく個体を探してみましょう!

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