マツダの5チャンネル体制戦略を知る―オートザム・チャンネル編
By Tobias ToMar Maier, CC BY-SA 3.0, Link
現在は「魂動」というデザインコンセプトを掲げ、各車デザインを中心に評価されて人気となっているマツダ。
そんなマツダにはかつて「5チャンネル体制」と呼ばれる戦略が存在していたのをご存じでしょうか。
5チャンネル体制は、販売ディーラー名を5つに分けて各ディーラー(販売チャンネル)を一つのブランドとみなし、独自の車種を投入することで販売力アップにつなげようという戦略でした。
この戦略が計画されたのはバブル景気の頃。ユーノス・ロードスターが世界中でヒットしたことで、得た利益を基にした更なるラインナップ拡大が1990年代初頭に始まったのでした。
この時期マツダの販売チャンネルは以下のように構築されました。
- マツダ・チャンネル
- アンフィニ・チャンネル
- ユーノス・チャンネル
- オートザム・チャンネル
- オートラマ・チャンネル
マツダはこの戦略により年間販売台数100万台という野心的な目標を掲げました。
しかし、蓋を開けてみると5チャンネル体制はニューモデルの乱立による混乱、マツダ車同士の競合、そしてバブル崩壊といった要因が重なり、結果としてマツダは経営困難に陥る事態に。
マツダとしては黒歴史といえる失策でしたが、ここで登場したニューモデルは軒並みマイナー車と化し、マニアの間で語り継がれています。
どんなクルマが登場していたのでしょうか。各チャンネルごとに紹介していきたいと思います。
今回紹介するのはオートザム・チャンネルです。
目次
オートザム・チャンネル
マツダの中でも小型車と軽自動車に特化したチャンネル。特に軽自動車はオートザム・チャンネルのみでの販売でした。
スズキやダイハツの看板を掲げているような街の整備工場などを中心にディーラーを展開。街に根付くディーラーとして親しみやすさをアピールしていました。
またオートザムではランチアの輸入権を取得し、デルタやアウトビアンキY10を販売していたこともあります。
オートザム・チャンネルの代表車種
オートザム専売車種の代表例を紹介します。
オートザムでは年を追うとスズキのOEM車が増えていきますが、ここではマツダが開発に関与したモデルを挙げていきます。
キャロル
By 天然ガス, CC BY-SA 3.0, Link
オートザムの第一弾としてデビューしたのが、軽自動車のキャロル。
クリフカットを用いたスタイルが特徴的だった初代の登場から27年ぶりの車名復活です。
エンジンやシャシーといったメカニズムはスズキから供給を受け、内外装をマツダが独自にデザインしています。
2代目となるキャロルは当時まだ珍しかったデザイン重視のファッショナブルな軽自動車。丸を基調としたレトロな外観が可愛らしく、女性ユーザーを中心に人気を集めました。更にオシャレを演出するキャンバストップも用意されました。
イメージカラーのピンクをはじめとするポップなカラー展開も特徴でした。
1995年には3代目にモデルチェンジを果たすものの、こちらは若干角張ったスタイルが2代目程の人気を得られず。4代目からは完全にスズキ・アルトのOEMとなってしまいます。
レビュー
By Rudolf Stricker, CC BY-SA 3.0, Link
オートザム・レビューはキャロルの1クラス上として登場した小型車です。
最大の特徴は、全長3800mmのコンパクトなボディながら3ボックスセダンのスタイルをキープしている点。
見た目からはあまり実用性を感じない小さなトランクながら、スーツケース2個を収納できる程の荷室空間を確保しています。
丸みを帯びた愛嬌のあるフロントマスクは、キャロルの成功を受けてこれまた女性ユーザーをターゲットにしたものでした。
キャロルと同様にキャンバストップも用意され、前方からも後方からも開閉を可能にしています。
エンジンは1.3L及び1.5Lの直4で、トランスミッションは3速AT(1.3L)、4速AT(1.5L)、5速MTが組み合わさります。
後継車はレビューのプラットフォームを使用した初代デミオ。
クレフ
By Kuha455405, CC BY-SA 3.0, Link
オートザムのフラッグシップ車がクレフ。
クロノスがベースになっており、車体はオートザムのクルマでは異例の3ナンバーサイズです。
軒並みマイナー車と化してしまったクロノス姉妹車(↓)の中でも、特に販売不振が深刻だったクルマ。
- クロノス (マツダ)
- MX-6 (マツダ)
- MS-6 (アンフィニ)
- MS-8 (アンフィニ)
- 500 (ユーノス)
- クレフ (オートザム)
- 3代目テルスター (オートラマ)
- 2代目プローブ (オートラマ)
オートザムで3ナンバーセダンを売るというミスマッチがクレフ不振の主要因とみられています。
グリルレスに4灯異形ヘッドライトを組み合わせた特徴的なフロントマスクは、キャロルやレビューの流れを汲んだもの。
エンジンは2.0L及び2.5LのV6、また4WD車には2.0Lの直4が与えられました。
このクルマそのものがレア車ですが、更に特別仕様車として、フロントマスクの中央2灯を廃してグリル風の横スリットが加えられた「リミテッドX」が存在します。
AZ-1
By Taisyo, CC BY-SA 3.0, Link
キャロルに続くオートザムオリジナルの軽自動車第二弾がAZ-1になります。
ミッドシップレイアウトにガルウィングの採用など、本格的な内容を備えたスポーツカーです。
スケルトンモノコックと呼ばれる車体構造がクルマ全体の剛性を確保し、FRP製のボディパネルは簡単に取り外し可能でした。
「マツダスピードバージョン」や「M2 1015」といった特別仕様車も登場し、装着された専用のエアロパーツは迫力満点。
快適性を犠牲にしたマニアックすぎる内容故に販売台数は多くなく、いまでは希少価値が上がっている1台です。
AZ-3
By Tokumeigakarinoaoshima, CC0, Link
AZ-3はユーノス・プレッソの姉妹車となる、FF駆動の小型クーペ。
外観ではプレッソとの違いは殆どありません。
初期に限っていえば、プレッソとの違いが表れていたのはエンジン。プレッソが1.8LのV6に対し、AZ-3は1.5Lの直4を搭載していました。
しかしながら1993年のマイナーチェンジで両車にV6と直4の両方が選べるようになった事で、メカニズム面でも差異がなくなりました。
その後の展開
5チャンネル体制の失敗を受け、オートザム・チャンネルにもメスが入れられることに。
1998年からオートザム・チャンネルは「マツダオートザム店」へ改称。
改称にあたり、売り上げや店舗規模などに一定基準を設けて、基準を満たした店舗のみがマツダオートザム店へ移行できる仕組みをとりました。
この移行期間の間にオートザムを名乗る店舗数は激減。マツダオートザム店となった店舗ではファミリアやプレマシーなど、それまでオートザム・チャンネルでは取扱いのなかったクルマを販売開始。
主力であった軽自動車は自社開発を完全に止め、全車種がスズキのOEMとなりました。
現在は一部店舗でオートザムの名称が残るのみで、販売網の管理はマツダ店・マツダアンフィニ店によって行われています。
まとめ
マツダが独自に開発した軽自動車は、オリジナリティ高い個性的なモデルが揃っていました。
自社開発の時代はすぐに終わってしまったものの、このまま続けて成熟した姿を見てみたかったですね。
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